小説と映画 攻殻機動隊 新劇場版

2029年3月、総理大臣暗殺事件という戦後最大の事件が発生した。被害者の中には草薙素子のかつての上司、501機関のクルツもいた。バトーやトグサたち寄せ集めメンバーと捜査を開始する草薙。事件の背後にあったのは、義体開発の行く末を左右する技術的障害【デッドエンド】をめぐる政治的取引。さらに「洗脳・ゴーストへの侵入、・疑似記憶の形成」を一度に行う電脳ウィルス【ファイア・スターター】の存在も見え隠れする。そして、事件を捜査する中で掴んだ手がかりは、草薙の秘められた生い立ちにも繋がっていたのだった……。暗躍する謎のサイボーグ。総理大臣暗殺の真相。“第三世界”の存在。その先に待ち構える罠。 “攻殻機動隊”誕生の瞬間に、世界は震撼する―。
映画『攻殻機動隊 新劇場版』2015年6月20日公開 - 「ARISE」TVシリーズも4月放映 | ニュース - ファッションプレス

映画『攻殻機動隊 新劇場版』

攻殻機動隊 新劇場版
(「攻殻機動隊 新劇場版」大ヒット公開中PV - YouTube

『マッドマックス 怒りのデスロード』の直後に攻殻を見たのだけど、なんていうか話の筋などすごく理解するのが困難に思った。下の人とほぼおなじような感想を持った。

さて、ここからは少々ネタバレです。押井版・神山版の前日談を描く「ARISE」&新劇場版は、若者のアイデンティティーのお話。――だと思ったのですが、背景となる政治・経済・外交を絡めた権力抗争が複雑すぎだと感じます。それは、新劇場版パンフレットの「関係図」にそのまま表れています。もう矢印があっちへこっちへグーネグネ、「全容がわかる関係図」と記してありますが、正直わかりません。戦後処理、軍再編、デッドエンド問題(電脳の規格変更を推し進めるか否か)などを巡って政府内部で対立があり、それぞれの勢力がグローバル企業や外国政府とつながって、謀略、裏切り、テロ、何でもありのその果てが新劇場版冒頭の大使館占拠と首相暗殺。
「攻殻機動隊」いつできた?(小原篤のアニマゲ丼):朝日新聞デジタル

映画鑑賞後の最初の疑問は、これは映画なのか?ということだ。観ていて人間関係や設定がとても複雑だなと思ったのだけど、他の人はこれを理解できただろうか。映画館の中で鑑賞者は全く受動的に映画を体験させられる。鑑賞者は早送りすることも巻き戻しすることもできない。もちろん内容を作り変えることもできないし、文句を言っても無意味だ。ただ静かに受動的に観るしかないのだ。その映画体験の中でわれわれは映画を理解する。しかし、この映画に限っては(限る必要はないが)何度も巻き戻したりしないと、内容が理解できないのではないか。それは映画体験というよりは、自分でページをめくる小説を読む体験に近いのではないか。小説は自分のペースで読むので全く受動的ではない。

ミラー:本作は「視覚的な音楽」といった映画にしたかったんです。無声映画のように言葉がなくても理解できる作品ですね。だから台詞もあまりありません。そういった点から、伝統的な言葉で書く方法よりも、絵で描くほうがふさわしい作品だと思いました。

ブレンダ・マッカーシーは特に『マッドマックス2』が好きで、以前『マッドマックス』の美しい絵を送ってくれたんですね。そのブレンダンの絵からは『マッドマックス』の世界への情熱が感じられました。

そこで、3,500の絵コンテを壁に張り出して、ブレンダン・マッカーシーを招き、他の2人のアーティストとともにみんなで映画全編を描いていったんです。ただ、それは表面的な部分に過ぎなくて、そこからさらに一つ一つのキャラクター、車両、武器、ギターといったものが、「どうして本作の世界に存在しているのか?」の背景やロジックを作り上げていきました。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ジョージ・ミラー監督にインタビュー | コタク・ジャパン

攻殻機動隊 新劇場版
(「攻殻機動隊 新劇場版」大ヒット公開中PV - YouTube

これは私の勝手な想像だが、攻殻の今作は絵コンテやレイアウトなどのビジュアルより先に文字、脚本があるのではないだろうか。それで、文字や脚本のほうが勝ちすぎているように思う。だから、複雑な小説のように何度か見返さないといけないような構成になっているのではないだろうか。それは映画としてはあまり良くないと思う。私は映画館では余程のことがない限りは一つの作品を一回しか見ない。何度も見る金銭的余裕もないし、他の作品もあるから。何回も見ないといけないというような作品が映画に適しているかは好みの問題なのかもしれないが、話が進んでいる間にあれなんだっけこれなんだっけと何度も思わせてしまっては、映画内の受動的な体験を損なうと思う(受動的とは時間のようにという意味)。簡単な理解しやすいものを作れとかいう主張をするつもりはないのだけど、サイズ感というかちょっと考えたり立ち止まったりする余裕というかそういうものが欠けているような気分を味わった。

攻殻機動隊 新劇場版
(「攻殻機動隊 新劇場版」大ヒット公開中PV - YouTube
9/10/2020
更新

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