ホテルで二人で会うために マスカレード・ホテル
映画『マスカレード・ホテル』公式サイト
映画の最後、すべての事件の解決を祝って、新田、山岸、能勢の三人はホテルで食事をする。テーブルのグラスにワインが注がれたところで、能勢は電話を取り「娘の彼氏が家に来た」と意味ありげにいい、そっちが気になるからといってワインだけを口に含んでその場を去っていく。テーブルには新田と山岸の二人が残される。能勢は何しに来たんだ、意味がないじゃないかということになるが、それはホテルで男女が密会するための工作であることが映画内で説明されている。山岸が言うには、男二人と女一人が同時にチェックインし、あとで入れ替わるのだという。ここでは関係ない人物が一人ついてきていることになる。
これと同じことが、殺人事件として起こっている。都内で三件の連続殺人が起こっていて、予告によるとホテル・コルテシア東京で次の殺人事件が起こるらしい。どの殺人現場にも謎の数字の羅列が書かれた紙が置いてあって、それから犯行が行われた日付を引くと次の殺人現場の緯度と経度が現れる。その予告現場がホテル・コルテシア東京だということで、警察が潜入捜査をすることになった。映画の終盤明らかになるのだが、この連続殺人は真犯人がそう見せかけたもので、犯人はそれぞれ別々である。その連続殺人を追っても真犯人には辿り着けない。それは警察に偽の情報を流して操作を混乱させるためのものなのだろうが、結局真犯人は次の犯行現場は正確に教えていることになる。これはどこかおかしい。犯人が逮捕されたあとも「犯人は連続殺人の見立てをする必要は無かった」と警察の上司が堂々と言っている。連続殺人の偽装が行われる意味がない。逆にそれをすることでホテルに警察を集めてしまっている。それらのこととは無関係に、これは密会のためのテクニックなのだ。連続殺人の偽装=能勢である。だから、警察はホテルに来るのだ。警察とホテルマンが密会する。そして誰もホテルに警察官が大量にいることに気づかない。
ホテルの外で起きた偽の連続殺人事件が次に起こる事件の解決に役に立たなくなったあとで、ホテルの中で起きる連続したトラブルがなぜか事件の解決の糸口になってくる。トラブルを起こす客は言わば事件解決のための連想として存在しているかのようだ。難癖をつけて泊まる部屋を変更を要求し、いくつかの部屋を選択のために用意させたり、ホテルに二回来て印象づけたり、ストーカーの件を思い出させたり、個人的な恨みをほのめかしたり、変装の可能性を示唆したりとホテルで起こったトラブルを総合すると、一人の人物がその全てをホテルで行っていることが明らかになる。その人物は殺したい人物とホテルで二人で会うためにそれを行っている。ホテルの客たちは何らかの形でそれぞれ嘘をついていることになり、それがトラブルの原因になっているのだが、同時に嘘をついているのがホテルの客のみに限定されるのかということが問題になる。事件は新田と山岸それぞれの過去の問題へとつながっていく。
ホテルでのホテルマンの役割は信じること、警察の役割は疑うことであるとされる。それらはそれぞれ山岸と新田によって象徴されている。ホテルマンの山岸は客の言う嘘を仮面をつけていると表現する。ホテルでは皆仮面をつけて非日常を楽しんでいる。山岸は「ホテルではお客様がルールです」といって客の言われたとおりにするのが正しいのだと何もかも疑おうとする新田にいう。彼女はなぜそこまで信じることにこだわるのか、それは一度ホテルに来た客を信じなかったからである。そして、その信じなかった客が犯人としてホテルに現れる。新田はなぜ疑うのか。それは彼が過去に疑わなかったからである。彼は帰国子女で英語が得意なのだが、たまたま来た教育実習生の英語の発音が下手で、クラスの皆が「代わりに新田読め」とからかい囃し立て、それを疑わず乗っかって新田は得意の英語を披露し、クラスの嫌がらせに加担してしまう。当時の教育実習生が偶然ホテルに来て復讐を始めるが、新田がホテルマンとして対応することでトラブルを回避する。こうして殺人事件の解決は山岸と新田の過去のわだかまりの解消へと向かう。それによって彼らは仮面についてどうこういう立場ではなくなる。信じることや疑うことに固執する必要はなくなる。彼らは客の仮面を疑うか信じるかという対立をやめ、客として仮面を楽しむ側に回れるようになる。
都内で3件の殺人事件が起こり、すべての事件現場に残された不可解な数字の羅列から、事件は予告連続殺人として捜査されることになる。警視庁捜査一課のエリート刑事・新田浩介(木村拓哉)はその数字を解読し、次の犯行場所はホテル・コルテシア東京であることを突き止める。しかし犯人への手掛かりは一切不明のため、警察はコルテシア東京での潜入捜査を決断する。新田はホテルのフロントクラークとして犯人を追うことになり、コルテシア東京の優秀なフロントクラーク・山岸尚美(長澤まさみ)が彼の教育係に任命される。刑事として次々と現れる素性の知れない宿泊客たちの仮面を剥がそうとする新田と、ホテルマンとして利用客の仮面を守ろうとする尚美は幾度となく衝突を繰り返すが、共にプロとして価値観を理解し合うようになっていき、二人の間に不思議な信頼関係が芽生えていく。そんななか、事件は急展開を迎え、警察とホテルは追い込まれていく……。
マスカレード・ホテル | 映画-Movie Walker
(映画『マスカレード・ホテル』予告映像【2019年1月18日(金)公開】 - YouTube) |
映画の最後、すべての事件の解決を祝って、新田、山岸、能勢の三人はホテルで食事をする。テーブルのグラスにワインが注がれたところで、能勢は電話を取り「娘の彼氏が家に来た」と意味ありげにいい、そっちが気になるからといってワインだけを口に含んでその場を去っていく。テーブルには新田と山岸の二人が残される。能勢は何しに来たんだ、意味がないじゃないかということになるが、それはホテルで男女が密会するための工作であることが映画内で説明されている。山岸が言うには、男二人と女一人が同時にチェックインし、あとで入れ替わるのだという。ここでは関係ない人物が一人ついてきていることになる。
これと同じことが、殺人事件として起こっている。都内で三件の連続殺人が起こっていて、予告によるとホテル・コルテシア東京で次の殺人事件が起こるらしい。どの殺人現場にも謎の数字の羅列が書かれた紙が置いてあって、それから犯行が行われた日付を引くと次の殺人現場の緯度と経度が現れる。その予告現場がホテル・コルテシア東京だということで、警察が潜入捜査をすることになった。映画の終盤明らかになるのだが、この連続殺人は真犯人がそう見せかけたもので、犯人はそれぞれ別々である。その連続殺人を追っても真犯人には辿り着けない。それは警察に偽の情報を流して操作を混乱させるためのものなのだろうが、結局真犯人は次の犯行現場は正確に教えていることになる。これはどこかおかしい。犯人が逮捕されたあとも「犯人は連続殺人の見立てをする必要は無かった」と警察の上司が堂々と言っている。連続殺人の偽装が行われる意味がない。逆にそれをすることでホテルに警察を集めてしまっている。それらのこととは無関係に、これは密会のためのテクニックなのだ。連続殺人の偽装=能勢である。だから、警察はホテルに来るのだ。警察とホテルマンが密会する。そして誰もホテルに警察官が大量にいることに気づかない。
(映画『マスカレード・ホテル』予告映像【2019年1月18日(金)公開】 - YouTube) |
ホテルの外で起きた偽の連続殺人事件が次に起こる事件の解決に役に立たなくなったあとで、ホテルの中で起きる連続したトラブルがなぜか事件の解決の糸口になってくる。トラブルを起こす客は言わば事件解決のための連想として存在しているかのようだ。難癖をつけて泊まる部屋を変更を要求し、いくつかの部屋を選択のために用意させたり、ホテルに二回来て印象づけたり、ストーカーの件を思い出させたり、個人的な恨みをほのめかしたり、変装の可能性を示唆したりとホテルで起こったトラブルを総合すると、一人の人物がその全てをホテルで行っていることが明らかになる。その人物は殺したい人物とホテルで二人で会うためにそれを行っている。ホテルの客たちは何らかの形でそれぞれ嘘をついていることになり、それがトラブルの原因になっているのだが、同時に嘘をついているのがホテルの客のみに限定されるのかということが問題になる。事件は新田と山岸それぞれの過去の問題へとつながっていく。
ホテルでのホテルマンの役割は信じること、警察の役割は疑うことであるとされる。それらはそれぞれ山岸と新田によって象徴されている。ホテルマンの山岸は客の言う嘘を仮面をつけていると表現する。ホテルでは皆仮面をつけて非日常を楽しんでいる。山岸は「ホテルではお客様がルールです」といって客の言われたとおりにするのが正しいのだと何もかも疑おうとする新田にいう。彼女はなぜそこまで信じることにこだわるのか、それは一度ホテルに来た客を信じなかったからである。そして、その信じなかった客が犯人としてホテルに現れる。新田はなぜ疑うのか。それは彼が過去に疑わなかったからである。彼は帰国子女で英語が得意なのだが、たまたま来た教育実習生の英語の発音が下手で、クラスの皆が「代わりに新田読め」とからかい囃し立て、それを疑わず乗っかって新田は得意の英語を披露し、クラスの嫌がらせに加担してしまう。当時の教育実習生が偶然ホテルに来て復讐を始めるが、新田がホテルマンとして対応することでトラブルを回避する。こうして殺人事件の解決は山岸と新田の過去のわだかまりの解消へと向かう。それによって彼らは仮面についてどうこういう立場ではなくなる。信じることや疑うことに固執する必要はなくなる。彼らは客の仮面を疑うか信じるかという対立をやめ、客として仮面を楽しむ側に回れるようになる。
9/10/2020
更新
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