隠された名前 LION/ライオン 25年目のただいま
オーストラリアで幸せに暮らす青年サルー。しかし、彼には隠された驚愕の過去があった。インドで生まれた彼は5歳の時に迷子になり、以来、家族と生き別れたままオーストラリアへ養子にだされたのだ。成人し、自分が幸せな生活を送れば送るほど募る、インドの家族への想い。人生を取り戻し未来への一歩を踏み出すため、そして母と兄に、あの日言えなかった〝ただいま″を伝えるため、彼は遂に決意する。「家を探し出す―」と。
映画『LION/ライオン ~25年目のただいま~』公式サイト
(『LION/ライオン ~25年目のただいま~』予告編 - YouTube) |
(映画『LION/ライオン ~25年目のただいま~』公式サイト)
金沢の映画館まで車で往復2時間の距離を走ってとても疲れたのだけど、この映画の主人公の移動に比べるとそれはチリのようなものだ。サルーは25年間、一万キロも迷子だった。彼は兄が夜間の仕事に行くと言った時に、自分もついていくといった。まだ小さいからダメだと兄は言うのだが、反対にもめげず、何とか自分のやる気をアピールして兄についていこうとする。けれど、サルーは目的地についたところで睡魔に勝てず眠ってしまう。5歳の子供に深夜の仕事は明らかに早すぎた。兄は眠る弟を見て仕事場まで連れて行くわけにもいかないので駅で待っているようにいう。サルーは眠い目をしながら聞いているのか聞いてないのか生返事をする。そしてまた寝てしまう。夜中に起きると、兄はいない。彼は電車の中を探すが誰もおらず、そのまま疲れて眠ってしまい電車で1600kmも離れたカルカッタへ運ばれてしまう。彼はそこで野宿をしたり、人さらいにさらわれそうになったり、怪しい男女のカップルに遭遇したりしながら、一人で生活をする。結局サルーは孤児院に送られることになり、そこで自分の出生地と思われるガネストレイについて尋ねるも誰も知らず、新聞に顔写真を掲載しても誰からも連絡が来ず、しばらくしてオーストラリアへ養子としてある夫婦に迎えられる。
その後彼は成長し大学でホテル経営を専攻するのだが、あるパーティでふと昔食べたいと思っていた揚げ菓子があるのに気づき、それを口にすると昔のことが鮮明に蘇ってきた。そして残してきた母と兄がまだ自分のことを探しているのではないかという思考に囚われ、彼は今ある生活をほとんど捨てて自分の生家を探すことに熱中しはじめる。自分の家族を残して自分だけがいい暮らしをしていると思うと吐き気がするのだという。
サルー(デヴ・パテル)は本当の家族を探し出そうと必死になっていたが、なかなか成果を出せず、苛立ちを隠せないまま恋人ルーシー(ルーニー・マーラ)や家族とも距離を置き始める。そんな状況の中、自暴自棄な生活をする弟マントッシュを心配するあまり、スーが体調を崩したとの知らせを受け、彼女の元を訪れるサルー。家族の心が離れ離れになっていることを心配するスーに、サルーは「ママに本当の子が居れば…」と漏らし、“過去を背負った”自分たちを養子に引き取ったことを嘆くが、スーは「子は持てたのよ」と切り出す。
困惑するサルーを前に、「でも産まずに、2人の養子をもらおうと夫婦で決めたの、あなたたち2人を家族にして生きていこうと」と涙を見せながら、息子にいままで隠していた真実を優しく語りかける。実子を持つという選択をせず、「恵まれない子たちを助けることには意義がある」と告げるスーに、驚きを隠せないサルー。しかし、スーは「私の生きる道はこれしかなかった」と愛する子どもたちを最優先する姿を見せるのだ。
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彼は数年をかけてGoogle earthを使って兄とはぐれた給水塔のある駅や母親が仕事をしていた石山、自分が軽い接触事故にあったストリートなどを発見しついに自分の住んでいた村を探り当てる。彼は育ての親をないがしろにしながら生みの親を探すことに専念することに、生みの親に会いに行くことに迷いを感じていたが、自分の思いを正直に告白し彼はインドへと飛びたつ。25年を経て自分の家がヤギ小屋になっているなどの変化があったが、無事に母親と再会する。
映画が始まって真上から撮った映像が続く。どこの映像なのかも、映っている地域につながりがあるのかもわからないが、とにかく執拗に真上からの映像が続く。映画の後半になって、その映像がGoogle earthを使うということの予告のようなものとなっていることがわかる。同じようにこの映画の最後で主人公の本当の名前が明らかになるが、そのことがこの映画の奇妙なところをあらわしている。彼の名前はサルーとなっているが、それは発音の間違いで、正しくはシェルゥという名前で意味はライオンなのだそうだ。そのことは映画の結末まで隠されていた。名前がずっと隠されていたのだ。同じことが彼が子供時代に警官にいった自分の出生地にもいえる。彼はその地名をガネストレイだと覚えていたが、実際はそれも発音の間違いでガネッシュ・タライが正しいのだという。彼はガネストレイという名を警官に教えるがそんな名前の土地を知らないのだという。結果、彼は大人になって、それが想像上の町の名前だったのだと自分で言っている。映画を見ていてずっと疑問だったのだが、なぜ彼はインドにある村の名前で頭文字が「G」の地名を片っ端から探さなかったのだろうか。片っ端といっても線路の方向がわかってるみたいなので、そこから地域をだいぶ絞って「G」が頭文字の地名を探すことができなかったのだろうか。彼は「Google earthという便利なものがあるよ」といわれて、それだけを使って熱心に探すのだが、さすがにその作業に3年以上かかるというのは、これは実話ベースなのだけど、とても奇妙な感じがした。彼の名前がライオンであることが隠されていたように、自分の出生地を探すのに手がかりとなる名前が予め隠されているような不自然さを感じた。なぜ、彼はガネストレイと自分の耳で聞いて覚えていた記憶をもっと信じなかったのだろうか。
9/10/2020
更新
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