籠城と地図 マグニフィセント・セブン

悪漢バーソロミュー・ボーグ(ピーター・サースガード)によって牛耳られ、絶望を感じながら生きているローズ・クリークの町の人々。住民の一人であるエマ・カレン(ヘイリー・ベネット)は、賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)、ギャンブラーのジョシュ(クリス・プラット)、流れ者、拳銃の達人といった7人の男を雇って、バーソロミューの手から町を救い出すように頼む。金のためと割り切って戦いに身を投じるサムやジョシュだったが……。
映画『マグニフィセント・セブン』 - シネマトゥデイ



もしもどこかに立て籠もって相手を待ち構えるならば、地図が必要ではないだろうか。相手がどの方面から攻めてきて、どの方面から攻めてこないのかによって作戦の立て方は異なる。『七人の侍』ではそのような地図が存在していた。こちら側には川があって攻めては来られないとかあちら側には田んぼがぬかるんでいて攻めては来られないなどの条件を加味して作戦を立てていた。その上で相手が攻めてくる場所を何箇所かに絞り込んで柵や堀などをつくっていた。『マグニフィセント・セブン』ではそういったことはほとんどなかった。地面を掘るにしても何にしても方向感覚や地理的な感覚がよく分からない。この映画で出てきた地図は一つで籠城する町と金鉱の現場の位置関係を示す大雑把なものだけである。そのことが単純に悪いとか下手であると言いたいのではない。そのような地図が出てこないのは、映画の舞台が荒野であることが当然だが関係しているだろう。つまり町の周りに何もないのだ。町から出ればどこででも地平線が見えそうなくらい土地は開けている。本来であればそのような開けた場所で籠城するというのは無謀すぎるのだ。どこから攻められるのか分からないし、逃げ場所もない。けれど、この映画では馬がそれを補っている。

最後の戦闘シーンは圧巻でとても迫力がある。しかしガトリングガンが出てくるまでの敵の動きはサムたちに作戦が半端なのと呼応して全く直線的で単調である。カウボーイたちが馬に乗って並行してやってくる様子は馬の足音と振動ともに観ているものの心をざわつかせる何かがある。けれど作戦が中途半端なことでそれは人の動きというよりは馬の動きに見える。そこでは人よりも馬のほうが主役に見えるのだ。実際、敵の馬たちが町のなかにやってきて荒野の七人たちに見事にやられるのだが、敵に関しては人よりも馬のほうが目立っている。主人を殺されて狼狽したり倒れ込んだり驚いたりしている馬がとても目立つのだ。人間よりも悲惨な目にあっているようにみえる。そして敵の顔は誰一人として思い出せない(もちろんボスは除く)。



町の人達との交流シーンでカットされているものが多くあるようだ。明日戦って死ぬかもしれない不安のなかで彼らがどう過ごすのかもう少し観たかった。でないと七人の違いは武器の違いにほとんど等しくなってしまわないだろうか。戦う理由もそこから見えてくると思うのだが、そうじゃないとただの武器あるいは兵器ということにはならないだろうか。
9/10/2020
更新

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